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いろんな企画系の仕事をしている30歳の男(ニーヨンロク)が、買ってよかったものとかうにゃうにゃ書きます

マタニティマークをめぐるアレコレを考えてみた。(かわいい、嫌いなど)

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仕事の合間にめっきり訪れなくなったYahoo!ニュースを眺めているニーヨンロクです。少し前の記事になりますが、こんなものを見つけました。

 

 

番組に出演していたダウンタウンの松本人志は以下のようにコメントしています、みなさんはどう思います?

 

「もしかしたら反感買うのかもしれんね。なんかすっごい温かい(イメージ)でしょ?これになんかちょっとイラっとする女性がいるのかもしれないですね」

 

本題に入る前に、僕は「あぁ、松ちゃんは年取っても松ちゃんのままだなぁ」と改めて発想の良さに驚かされました。ずいぶん昔の話ですが、番組で松ちゃんがとある事柄を知らなかったところ、観覧者から「松ちゃん遅れてるぅー」と言われたことがありました。並の芸人なら「うるさいボケ」「やかましいわ」など突っ込むところですが、そのとき松ちゃんの口から出た言葉は予想もつかない切口のものでした。

 

 

「お前と同じ方向見とらんわ」

 

 

いつも彼のボケや言動は大半の人がAだと思う方向を避け、BやC、ときにはZくらいまで離れたものです。これは広告業で言えばコピーライターの考え方に通ずるような気がします。普通に言っても面白くないものを別の角度から光を当てることで、全く別の一面を見せる。そんなことを彼は涼しい顔でやってのけます。

 

 

さて、話の本題であるマタニティマークですが、この問題は「誰のためのマタニティマークなのか?」を考えなければ答えが出ません。いや、「誰のため」だとまだ精度が低いですね、「誰が見るため」というのが適当でしょう。それは間違いなく、「妊婦さんの周りにいる人」です。ただこの定義だけではターゲットがあまりにも広く、適切な表現を考えることはまだ難しいですね。


そこで妊婦さんが接触するだろう人を考えていきます。まず、家族。これはマークなどなくとも当然知っていますから、ターゲットから外れます。次に病院関係の人、これも家族とほぼ同様と考えて問題無いでしょう。他には働いている方であれば職場の人もいますね、これも一日の大半を一緒に過ごしていますから、前の二つと同じはず。あっ、あと友人もいますがこれも大丈夫ですね。残るは、これが殆どなんですが、外で出遭う人、つまり他人です。


他人を年齢や性別で区分けすることは可能ですが、実際に即したものにはならないので適用が難しい。それは電車に乗ればわかります、時間帯にもよりますがこどもからお年寄りまで満遍なく乗っています。恐らくマークをデザイン・企画した人たちはターゲットのカテゴライズは不可能と判断し、「妊娠」や「妊婦」、「あかちゃん」から受けるイメージをイラストにしたはずです。ターゲットの分類に深追いしても無理があるので、この判断は間違っていないでしょう。では何が問題だったのか?

 

なかなか難しいお題だな。

 

うん、とっても難しい。メッセージを届ける相手が決まれば、表現は格段にしやすくなります。例えば「カロリーが気になるけどデザートを食べたい女性」なら低カロリー訴求ができるし、「痛風が気になる男性」なら糖質カット訴求ができます。それが今回はできない。このままデザインに着手すると、間違いなく現行デザインと似たものになってしまう。うーん。

 

半ば諦めがちになりながら色々なマークを眺めていたら、あることに気づきました、というより思い出しました。それは「マークの意味」です。マークとは日本語で言えば「記号」。記号とはある事物を端的に表現する場合に用いる。マタニティマークであれば「私は妊娠しています」という事実を端的に表現しています。つまり記号とは「客観的な事実」を伝えるために考えだされたものなのです。クルマの初心者マークもそうですね、誰がみても「運転しているのは初心者です」ということが客観的に理解できる。では同じマークでも何故、マタニティマークだけが問題になっているのか。それは、「記号に意味が付加されている」からだと思うんです。もう少し丁寧に書くと、「私は妊婦なので、マタニティマークを付けています。だから色々察してね」というメッセージが込められている。メッセージの主体は妊婦さんではありません、デザイナー・企画者です。つまり作り手の一方的なゴリ押しメッセージが、一部の受け手からは拒絶されたと考えられます。それはそうかもしれません、なかなかこどもに恵まれない女性は世の中にたくさんいますし、妊婦なのに満員電車に乗ってくるなと思う男性も少なからずいるでしょう。そういう人たちからすれば、現行の幸福感溢れるマークは少し重いのかもしれません。
もしこの考えが妥当であれば、マタニティマークはもっと本来の記号的なものにすべきです。どんな受け手でも単純な「情報」として受け止められるデザイン、とってもハードルが高いですが、助けてほしい周りの人から疎まれるデザインでは残念ですからね、ちゃんと考えたいものです。

 

書き終わって気付きましたが、記号をめぐる、情報や意味についてはこの本からけっこう影響を受けていました。もしご興味あれば。 

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

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それでは、ほばばーい!